HBF 公益財団法人 放送文化基金

文字サイズ:

HOME放送文化基金賞受賞のことば 第42回【番組部門】ラジオ番組

放送文化基金賞

受賞のことば 第42回【番組部門】ラジオ番組

受賞一覧へ戻る

★最優秀賞

贄の森
(CBCラジオ)

森 理恵子さん、森合 康行さん

 6年前、熊の殺処分現場を取材しました。罠に掛かった小熊の横では、移送を求める保護団体と殺処分やむなしとする自治体職員らが激しく衝突していました。後日、この収録した音声を何度も聴き返し、ふと想いました。騒動の中で狩猟者は、どの様な気持ちで熊を殺処分したのだろう・・・。
 取材から6年が経ち、野生動物をめぐる問題は、これまで以上に顕在化しています。あれから何が変わり何が変わっていないのでしょう?
 番組タイトル『贄の森』には、二つの意味が込められています。一つは、爆発的に増え続け殺処分される「野生動物」。もう一つは、駆除という殺生を強いられる「狩猟者」。どちらも「贄」です。
 この番組が、有害鳥獣駆除問題を考えるきっかけになり、殺処分を行う狩猟者には、心の葛藤があることを感じて頂きたいと思います。
テラ・プロジェクト 森 理恵子

★優秀賞

FMシアター あいちゃんは幻
(NHK名古屋放送局)

笠浦 友愛さん

 人は夢を語るよりも嘘をつく時の方が、よりその人の素がこぼれ出る気がします。以前テレビドラマ部門で受賞した『熱の島で』は、他人の思い出を盗む嘘つきの女の話でしたが、今回の『あいちゃんは幻』も、出会い系サイトの嘘のキャラを演じる二人の女の物語なのが、不思議な巡りあわせを感じます。安藤サクラさんと成海璃子さんが、現実とうまく折り合えずにもがく女同士の遠い友情を、生々しく切なく演じています。ラスト近くで語られるように「永遠に続くものなんかない」世界で、幻のあいちゃんが寄る辺ない人たちにほのかな希望を灯せたら、という思いを込めた物語です。
NHK名古屋放送局 笠浦友愛

●奨励賞

さくらFMスペシャル
~福山雅治「被爆クスノキ」へのメッセージ

(西宮コミュニティ放送)

岩田 隆清さん、北村 英夫さん

 ゲストで同じラジオ人間の哲久さんとは「ラジオは音しか聞くことができない。その音の純度を高め、イメージ豊かな世界を伝えるのがラジオである」というのが共通認識で、彼と20年以上に亘って集めた音は宝物です。一部をご紹介しますと、番組で使用した模擬原爆の破片を叩く音や模擬原爆体験者の声、それに終戦間際、紀伊半島の山奥に墜落したB29の残骸の音、第5福竜丸が建造されている時の音、沈んだ海底から引き揚げられた第5福竜丸のエンジンを叩く音、1927年にアメリカから贈られてきた「青い目の人形」の泣き声や目を開けたり閉じたりする音、その時に歌われた「人形を迎える歌」などです。
 音に光を当てて頂いた受賞に感謝します。
西宮コミュニティ放送 岩田隆清