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各地で行われた制作者フォーラムの模様を、参加者の声を交えて伝えます。

2017年12月11日

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レポート+寄稿

 2017年11月25日(土)、NHK福岡放送局よかビジョンホールにて、九州放送映像祭実行委員会と放送文化基金が主催する「九州放送映像祭&制作者フォーラム」が開催されました。
 このフォーラムには、九州・沖縄の全民放テレビ局とNHKが協力、制作者を中心に、約70名が参加しました。
 初めに行われたミニ番組コンテストには、29作品が参加。審査員の横山隆晴さん(近畿大学総合社会学部教授)、隈元信一さん(ジャーナリスト)、佐々木健一さん(NHKエデュケーショナル 特集文化部 主任プロデューサー)、トコさん(コラムニスト)が講評を述べました。
 引き続き、「テレビはこうして膨らませる」と題したNHK大型企画開発センターの寺園慎一さんによるトークセッションが行われました。寺園さんは、主に「クローズアップ現代」「NHKスペシャル新・映像の世紀」などを制作しています。今回は俳優山田孝之さんを過去の映像の中にタイムスリップさせたNHKスペシャル『戦後ゼロ年 東京ブラックホール』の一部を会場で上映し、なぜこの番組が多くの視聴者に受け入れられたか、などを話しました。「NHKの制作する戦争ものは、いわゆる“勉強”的なものが多く、若い人などは敬遠しがちである。『東京ブラックホール』はドラマ仕立てにしたことで、多くの人が戦争を体感・実感しやすい番組になったのではないか」と語りました。

 ミニ番組コンテストでグランプリを受賞した良永晋也さん(九州朝日放送)、審査員長の横山隆晴さん(近畿大学教授)、実行委員の川上敏哉さんに、フォーラムの感想をお寄せいただきました。

グランプリ受賞
何度でも言います。やっぱり「災害は忘れたころにやってくる」
良永 晋也(九州朝日放送 報道部)

 あの日。記録的短時間大雨情報の第一報で、報道フロアは一気に緊張に包まれました。誰もが、恐るべき事態を想像し身震いがしたものです。
 …これ、真っ赤な嘘です。実際は誰も、正確に事態を見通せてなんかいませんでした。そして、気がついたときには現場の記者を死の危険に晒していました。
 かくして今回の映像は「お蔵入り」になるはずでした。しかし私たちは、蛮勇を称えるほど愚かではありませんが、自らが得た教訓を視聴者に示せないほど臆病でもありません。私の中では、放送をしないという選択肢はあり得ませんでした。
 そして、皆様の力作が並ぶ中で最大級の評価を頂きました。素直に嬉しく思います。ただ一方で、同じようなVTRが再び生み出されないことを、私は願っています。

ミニ番組コンテスト審査員長
「九州・沖縄のテレビ制作者の皆さんへ敬意を表して」
横山 隆晴(近畿大学総合社会学部教授)

 「九州放送映像祭&制作者フォーラム」に、九州・沖縄地区で日夜奮闘している大勢のテレビ制作者が今年も集結した。ミニ番組コンテストには29作品が並び、そのどれもが力作ぞろい。扱うテーマは九州・沖縄らしさに溢れ多岐に拡がり、その制作力と底力に目が離せない事態となった。九州朝日放送『九州豪雨・あの時私は』がグランプリを受賞したのは渾身の報道的観点から。準グランプリのテレビ長崎『白衣のメロディ』は、音楽を通して患者の心を救おうとする若い医師2人の感動の記録。医療ドラマの新企画になる可能性も潜在。同じく準グランプリの鹿児島放送『アマミノクロウサギを救え!』は、世界自然遺産登録で注目が集まる奄美大島の見過ごしてはならない現実を冷静に切り取っている。木枯らしの吹く博多を29作品の熱気が包む一日となった。

実行委員
「若き制作者たちの想いを力に!」
川上 敏哉(福岡放送 制作スポーツ局 部長)

 昨年は震災。そして今年は記録的豪雨。天災が九州を揺るがしています。
 その九州に根を張る制作者たちが集うこの九州放送映像祭でも豪雨の凄まじさを訴える作品が出品され、大いに評価されました。
 しかし、若き制作者の「眼」は天災だけに注がれたわけではありません。
 社会的弱者に「寄り添う。」地元の伝統文化を「継承する。」
 新しい文化を「発信する。」
 この映像祭では、たくさんの制作者の溢れんばかりの「意思」を感じる事ができ。
 審査員の方からは「九州のレベルが上がっている!」とのお言葉も頂くほどでした。

 九州に寄り添い、継承し、発信する強い意志。
 この意志の力なら、また九州を元気にできる。
 そんな思いを強く感じる一日となりました。