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読む・楽しむ 日本賞企画部門特集
日本賞の企画部門の最優秀賞/放送文化基金賞の受賞者へのインタビューを掲載します。

2016年12月26日

レポート

第43回「日本賞」教育コンテンツ国際コンクール【企画部門】 最優秀賞企画

『未来は私のもの』 受賞レポート

ノヴェラ・ニコンさん

 NHKが主催する第43回「日本賞」教育コンテンツ国際コンクールが開催され、当基金が賞金のスポンサーとして参加する企画部門には、18の国・地域の31機関から34企画の応募がありました。この部門は、予算や機材などの条件が十分でないために番組制作が困難な国・地域の放送局や制作プロダクションなどの優秀なテレビ番組企画を表彰し、番組として完成させることを目的としています。最終選考に残った5つの企画からプレゼンテーション審査を経て最優秀企画に選ばれたのは、ドゥルーパッド・コミュニケーション―教育発達メディア(バングラデシュ)に所属するノヴェラ・ニコンさんの企画 『未来は私のもの』。11月2日に開催された授賞式で、末松安晴理事長からニコンさんに「放送文化基金賞」として賞牌、賞金10,000ドルが贈られました。
 『未来は私のもの』は、バングラデシュでの児童婚の問題を問う番組の企画です。

受賞したノヴェラ・ニコンさんに、授賞式の後でお話を伺いました。

 ノヴェラ・ニコンさんが所属するドゥルーパッド・コミュニケーション - 教育発達メディアは、教育と人権の発展に特化して問題を提起する小さなメディア組織で、ニコンさんはそこでリサーチ・チームに所属しています。ニコンさんはeメールや広告を使って、支援が必要な問題を調査しています。組織には、カメラマン、編集者、リサーチャー、コーディネーターが所属する制作チームがあります。所属している全員が別の仕事を持ちパートタイムで仕事をしているそうです。
 ニコンさんは、大学でファイナンス(財務・金融)を勉強している学生です。ドゥルーパッドでの仕事はパートタイムですが、プロとして知識とスキルを身に着け、将来は自分の組織をつくり、アニメーション・フィルムを制作したいという希望を持っています。
 ニコンさんがこの番組を制作したいと思ったきっかけは、児童婚の現状を知ったこと、そして、ニコンさん自身も犠牲者になり得ると考えたからです。
 18歳未満での結婚を強いられている少女の数は7億人を超え、アジア、アフリカを中心に深刻な問題となっている児童婚。バングラデシュは、そのなかでも最も児童婚の割合が高い国だとされています。家庭の中で少女を長く育てることは、経済的な負担になると考えられているようです。少女たちは、親に強いられて幼くして結婚し、教育を受ける権利も自立するチャンスも奪われてしまいます。
 また、性的暴行を受ける事態が発生した場合、咎められるのはその少女で、もう一生結婚できなくなります。この極めて非人道的で危険な状況を知ったことがきっかけとなった、とニコンさんは話してくれました。
 ニコンさんの身近では、とても優秀なのに結婚させられ能力を生かせない友人がいるそうです。またニコンさん自身の場合、彼女の親戚がニコンさんを結婚させようとしました。両親が強く反対してくれたそうですが、多くの場合、娘が早く結婚することを両親が望むそうです。ニコンさんはこの番組を制作することで、少女たちの状況を改善したいと話します。 ニコンさんは、農村地域を訪ねて犠牲者の少女たちを探し出し、話を聞いて撮影する予定です。とても個人的な話を聞くので、まず家族のような絆を築いて心を開いてもらわないといけないと語ります。
 完成した番組は、国営テレビチャンネルでの放送を予定しています。バングラデシュには22の衛星放送チャンネルがありますが、電気もテレビ放送もまったく使えない地域が存在するため、そのような地域にはプロジェクターを持ち込んで番組を上映することを考えています。
 バングラデシュ全体で視聴されることが重要なので、ソーシャルメディアを介して配信をしたり、世界中の映画祭に出品することも検討するそうです。
 ニコンさんは「今日1人、明日1人と児童婚を否定し、変化に対して前向きな考え方を持ってくれたら、その考えが広まって何かが生まれるはずです。この国だけでなく、世界中にメッセージを発信したいと思っています」と話してくれました。