HBF 公益財団法人 放送文化基金

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放送文化基金について

設立40周年記念寄稿⑧

2014年に40回目の放送文化基金賞を迎え、番組部門のテレビドキュメンタリー番組、テレビドラマ番組、テレビエンターテインメント番組、 ラジオ番組、そして個人・グループ部門の放送文化、放送技術の6名の委員長に各部門の10年を振り返っていただきました。

放送技術
番組を支える放送技術
長谷川 豊明 委員長

 放送文化基金が設立40周年を迎えた。この間、技術は放送番組をどのように支えてきたのであろうか。基金への放送技術部門への応募内容を振り返りながら、その動向を見てみる。基金が設立された1974年頃には、カラーテレビの普及率は白黒テレビを上回り、色彩豊かな映像が家庭に届けられた。その後、衛星放送がスタートし、多チャンネル化に伴って番組の多様化時代が始まった。1990年頃には、ハイビジョンに関する技術開発が多く応募され、テレビはハイビジョン化により、すべての番組は大画面で鮮明な映像となり、その技術成果は今日までに至っている。
 では、最近の10年間はどうであろうか。地上放送のデジタル化に関する応募が圧倒的に多く、テレビはデジタル化により、従来のアナログに比べて電波障害による画質・音質の劣化がなく、より鮮明なハイビジョン映像を全国隅々までに届けるようになった。また、データ放送がスタートして、番組表や番組情報の利用、さらに、インターネットとの接続によって双方向サービスが可能となり、視聴者がアンケートやクイズに参加することが可能になった。また、ワンセグ放送により、テレビ番組は携帯電話で、いつでもどこでも視聴できるようになった。
 地上放送のデジタル化以外の応募では、テレビカメラの分野で、月周回衛星「かぐや」に搭載した月と地球をハイビジョンカメラで撮影するシステムや、素早い動きを超スローで映像化する超高速高感度小型カラーカメラ、また、水上と水中を連続した映像として撮影する「ツインズカム」など新たな映像表現を視聴者に提供した。この他、東日本大震災の影響を受け、ヘリコプターからの空撮映像に地名が表示される「スカイマップ」や、災害時でも回線の確保が容易なインターネットを利用した取材連絡ツール「ロケーションサポーター」など災害・緊急報道番組を支援する技術開発が多く寄せられた。
 さて、今後はどのようなテーマが提案されるであろうか。現在の放送に関する技術の改善は引き続き開発され、提案されるであろうが、テレビはハイビジョンより高画質な4Kテレビ、8Kテレビへと進化し、これに伴って関連の機器や、システムの開発が活発になると予想される。また、すでに、サービスが始まっているハイブリッド・キャストは、放送のメリットである「豊富なコンテンツを、多くの視聴者に同時に配信する」ことと、通信のメリットである「一人ひとりのニーズに、リアルタイムで対応する」こととを融合した新たな放送で、今後、その高度化に向けて開発が進むであろう。こうした将来の放送の番組を、より一層支えていけるよう、放送に携わる技術者の皆さんの活躍を大いに期待したい。

(2014年9月30日)