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放送文化基金賞

受賞のことば 第41回【番組部門】テレビドキュメンタリー番組部門

★最優秀賞

ETV特集 薬禍の歳月~サリドマイド事件・50年~
(NHK)

鶴谷邦顕さん、角文夫さん

 「私たちの生き様を記録してください」。初めての取材で被害者の一人から告げられた言葉です。事件がもたらした傷、それは二重三重に被害者の人生に立ちはだかりました。そして、今なお、新たな健康被害が明らかになろうとしています。私たちは、被害者の皆さんが自ら語る、それぞれの半生を記録することに徹しました。そこから見えてきたものは、半世紀の重みをもった薬害への「告発」であると同時に、苦難の中を生きる人間の「尊厳」でした。「薬禍の歳月」は、被害者の皆さんの人生と共に続いていきます。私たちは、そこから何を学ぶことが出来るのか。これからも考え続けていきたいと思います。
NHK 石原大史

★優秀賞

TUFルポルタージュ
ふつうの家族 ある障がい者夫婦の22年

(テレビユー福島)

深谷茂美さん、伊藤 明さん

 今から20年以上も前、私は生まれたばかりの赤ちゃんをこの腕に抱きました。両親には共に重い障がいがあり、日常生活の多くで手助けを必要としていました。「一体どうやって赤ちゃんを育てるのだろう」と誰もが思ったはずです。私は夫婦の子育てを夕方のニュースの特集で時折紹介しながら、「障がい者が地域の中で普通に暮らせる社会」を目指した夫婦の取材を続けました。子供の成長を考えてカメラ取材を控えた時期もありましたが、私は子供の成長を見届けるのが自分の役割だと思ってきました。地味な各駅停車のような取材でしたが、相手の人生にこれ程長く関わり自分自身の生き方にも影響を受けるような関係が築けたのはとても幸せなことでした。
テレビユー福島 深谷茂美

●奨励賞

NHKスペシャル
知られざる衝撃波~長崎原爆・マッハステムの脅威~

(NHK福岡放送局、NHK長崎放送局)

石原茂雄さん、山元康司さん

 「アメリカが最も重要と考えていたのは放射能ではなく、爆風の効果だった。」
 第二次大戦中のアメリカの核戦略を研究しているウェラースタイン博士の言葉です。原爆投下の年だけで亡くなった7万人の、およそ半数の死因と見られる「爆風」。その爆風を巻き起こした「マッハステム」とは何なのか。記者とディレクター、4人の取材チームが城山国民学校の生存者や残された手記を発掘し、国内外の科学者の協力を得て凄まじい破壊力の検証実験を行いました。集めた事実に基づき、マッハステムの脅威を可能な限り視覚化したのがこの番組です。「爆風」という視点で捉えた原爆の非人道性を、多くの方々に知っていただきたいと思います。
NHK福岡放送局 坊 恵一

●奨励賞

NHKスペシャル 水爆実験 60年目の真実
~ヒロシマが迫る“埋もれた被ばく”~

(NHK広島放送局)

花井利彦さん、高倉基也さん

 原因不明の病で仲間が次々と倒れていくのに、被ばくを証明する術がない。そうした漁船員の無念を、広島の研究者が知ったことから、この番組は立ち上がりました。
 わずかな手がかりから、埋もれていた被ばくの事実が次々と明らかになり、国は被ばくの可能性を知りながら、対応を怠っていた実態も判ってきます。番組放送後、厚生労働省は、ついに実態の把握に乗り出しました。
 今回の研究者たちは、長年、見えない放射線の影響に苦しむ被爆者と向き合ってきた人たちです。わずかな痕跡から被ばくに迫る姿からは、「葬り去られる事実があってはならない」という確固たる信念を知りました。それは、放送に携わる私たちへの叱咤激励でもあった気がします。
NHK広島放送局 高倉基也

●奨励賞

BS1スペシャル 女たちのシベリア抑留
(テムジン、NHK、NHKエンタープライズ)

小柳ちひろさん、太田宏一さん

 「忘れよう、忘れようと思って生きてきました」。取材で探し出した女性たちの多くは、戦争と抑留体験を、思い出し、語ることができませんでした。日本の国策によって満州や朝鮮、樺太に渡った後、敗戦の結果としてソ連に連行された女性たちが負った傷の深さは、今でも推し量ることができません。取材の過程で、女性たちが体験したさまざまな出来事が否定される場面に遭遇しました。歴史に書き残されることのない事実、歴史を書き残すことのない女性たちの記憶の一端を記録に残すことができ、取材で出会った様々な方々に対する責任を少し果たすことができたかなと思っています。
テムジン 小柳ちひろ