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HOME放送文化基金賞受賞のことば 第42回【番組部門】テレビドキュメンタリー番組部門

放送文化基金賞

受賞のことば 第42回【番組部門】テレビドキュメンタリー番組部門

★最優秀賞

第30回民教協スペシャル
しあわせ食堂 笑顔と孤独と優しさと

(青森放送)

小山田 文泰さん、橋本 康成さん

 「青森からあなたへ」という思いで、いつも番組を制作してきました。これは青森放送の先達から脈々と受け継がれてきたドキュメンタリーのスタンスです。  本州の北端の食堂で灯された小さな光は、その輝きに共感した主婦スタッフ達と、吸い寄せられるようにやってきた地域の高齢者に育まれ、次第に温かさを内包していきました。そしてその灯が人々の心を癒し、そこに優しい時間が流れるようになった時、食堂はスタッフ、高齢者双方にとって「大切な空間」になっていたのです。 「青森からあなたへ」。この番組が「幸せな老後」とは何かを考えるきっかけになれば幸いです。
青森放送 小山田文泰

★優秀賞

NHKスペシャル
原発メルトダウン 危機の88時間

(NHK)

鈴木 章雄さん、藤川 正浩さん

 今回の番組に向けて、私たちはこの5年間で取材した証言や内部資料、東京電力のテレビ会議の記録、事故調査報告書などをもとに福島第一原発事故に関する詳細な「時系列」を制作しました。事故の経過を分刻みで再構築し、原発内部の「真相」に迫るためです。そこから見えてきたのは、未だに多くの謎がこの事故には存在するという、厳然たる事実でした。事故から5年がたち、社会や私たちメディアの関心も薄れているように思えてなりません。あの事故はそれほど軽いものだったのか。事故の「真相」に迫る取材を続け、絶えることなく報道を続けることこそが、事故を防げなかった私たちの世代のせめてもの役目ではないかと、いま思います。
NHK 鈴木章雄

●奨励賞

KNBふるさとスペシャル
沈黙の70年 富山大空襲と孤児たちの戦後

(北日本放送)

岡部 英明さん、濱谷 一郎さん

 当番組の生みの親は企画・構成の濱谷一郎氏です。長年、富山大空襲を取材してきた濱谷氏は戦後70年の節目に、闇の中で光が当てられてこなかった存在があることに気づきました。番組化の第一歩でした。
 『戦争の犠牲者はいつも子どもたち』という言葉があります。大人の事情で始まった戦争に子どもは抗うことができません。今回の取材で、戦争が残す爪痕は計り知れなく深く、残酷なのだと改めて実感しました。取材した男性の言葉です。「孤児たちのリアルな証言は戦争の抑止力につながる」――後世に伝えていく責任が私たちにはあります。
 終わりに、沈黙を突き破って証言していただいた戦争孤児とそのご家族の皆様に深い感謝と敬意を表します。
北日本放送 岡部英明

●奨励賞

NHKスペシャル 震度7 何が生死を分けたのか
~埋もれたデータ 21年目の真実~

(NHK大阪放送局、NHK神戸放送局)

東條 充敏さん、吉見 和紀さん

 「次は大丈夫なのか?」・・・番組制作に関わったスタッフ全員の正直な実感です。5036人分の詳細な死の記録の存在を知ったのは去年の夏。私たちは、埋もれているデータがまだあるのではないか、それらを最新の技術で分析すれば命を守る教訓が導き出せるはずだ、そう考えて取材をすすめました。そしてわかったのは驚くべき事実でした。耐震性の低い住宅や時間をおいて発生する火災など、命を奪った原因に対して、根本的な対策はいまだ進んでおらず、都市直下地震が起きたらまた多くの人が犠牲になる可能性が高い、というのです。あの日の悲しみを繰り返さないために・・・、これからも備えの重要性を訴える番組を作り続けていきたいと考えています。
NHK大阪放送局 東條充敏

●奨励賞

NHKスペシャル 女たちの太平洋戦争
従軍看護婦 激戦地の記録

(テムジン、NHK、NHKエンタープライズ)

矢島 良彰さん、太田 宏一さん

 2015年、終戦から70年の節目の年であると同時に、『後方支援』の是非が議論されている今だからこそ、70年前、実際に後方支援に従事し、戦場の実情を知っている人たちの声を伝えたいと強く思いました。
 元従軍看護婦の女性たちが、インタビューに臨む際、日頃の柔和な表情を一変させ、戦争の犠牲となった死者たちの怒りと無念の声を代弁しようとする、その気迫に圧倒されました。放送から半年余りの間に数人が鬼籍に入り、重い遺言となりました。
テムジン 小柳ちひろ