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HOME放送文化基金賞受賞のことば 第43回【番組部門】テレビドキュメンタリー番組部門

放送文化基金賞

受賞のことば 第43回【番組部門】テレビドキュメンタリー番組部門

★最優秀賞

NHKスペシャル
ある文民警察官の死 〜カンボジアPKO 23年目の告白〜

(NHK大阪放送局)

旗手啓介さん、三村忠史さん

 2015年9月の安全保障関連法の成立によって、戦後日本の安全保障政策は大きく転換しました。その一方で、1990年代前半から参加してきた各地でのPKOや、自衛隊のイラク派遣など、日本の国際貢献のあり方について検証する番組は決して多くありません。カンボジアPKOで5人が銃撃され1人が命を落とした日本文民警察隊の活動に関しても、長く顧みられてきませんでした。今回、取材に応じて下さった隊員のみなさんは、「停戦合意」が揺らぐ紛争地の実情を生々しく証言しました。四半世紀近くも待たされた“告白”は、私たちメディアに身を置く者の怠慢を照射しているように感じられてなりませんでした。
NHK大阪放送局 三村忠史

★優秀賞

はりぼて
腐敗議会と記者たちの攻防

(チューリップテレビ )

五百旗頭幸男さん、西田豊和さん

 この番組の取材に関わったのは、記者11人、カメラマン11人。撮影したテープは600本以上にのぼります。全国最小規模のローカル局が報道スタッフ総動員で挑んだ取材です。ドキュメンタリーにまとめるにあたっては、コテコテの権力追及番組にはしたくありませんでした。登場する市議、市長、市職員はそれぞれにキャラクターが立っていました。対峙する記者たちも皆タイプが違います。直球ど真ん中一本勝負の速球派もいれば、多彩な変化球と緩急で間合いを詰める技巧派もいます。そんな記者たちと権力側の攻防では、様々な化学反応が生じます。そこに垣間見える、不正議員らの滑稽かつ愛すべき弱さのようなものこそが見せ場でした。
チューリップテレビ 五百旗頭幸男

●奨励賞

ETV特集
水俣病 魂の声を聞く 〜公式確認から60年〜

(NHK熊本放送局、NHK福岡放送局)

吉崎健さん、福島広明さん

 取材させて頂いた皆様に心より感謝いたします。患者や家族の貴重な証言を記録した録音テープが残されていると知ったのは4年前でした。しかし、証言を集めた岡本達明さんは、なかなか取材に応じてくれません。今回、3年越しの交渉で初めてテレビ取材が可能になりました。録音テープを切り口に、これまでほとんど取材を受けなかった方々の話を聞いて回りました。坂本美代子さんは、今なお水俣病で亡くなった姉が夢に現れ、苦しんでいることを告白してくれました。渡辺栄一さんは、補償金をもらった後に何が起きたのかを語ってくれました。水俣取材25年の記者とディレクターによる長年の蓄積と粘りで辿り着きました。重ねてお礼申しあげます。
NHK熊本放送局 吉崎 健

●奨励賞

じいちゃんの棚田
(テレビ愛媛)

友近晶二さん、片上裕治さん

 この番組の登場人物は、田舎で暮らす普通のお年寄りたち。困難に直面した時に「奇跡のように解決できる人」など一人もいません。それでもじいちゃんたちは、天に召されるその日までがんばるしかないのです。何が起きても「かまん、かまん」と受け入れながら。
 過疎や閉校はもう当たり前の事と思う人も多いでしょう。でも日本中の田舎がその無関心ゆえに今にも消えそうになっています。みなさんの故郷は今も残っているでしょうか?今回の賞は、誰に褒められるでもなく慎ましく生きてきたすべての“じいちゃん”たちに贈られた「ちゃんと見てるよ」というメッセージだと受け止めています。これからも地域を見つめた番組作りに努力いたします。
テレビ愛媛 友近晶二

●奨励賞

NHKスペシャル
決断なき原爆投下 米大統領 71年目の真実

(NHK広島放送局)

葛城豪さん、高倉基也さん

 2016年5月、広島の町はオバマ大統領の訪問という歴史的な出来事に沸きました。私たちはこれを生中継で伝えましたが、前向きなイメージだけが一人歩きしていくように思え、戸惑いを抱きました。ちょうどこの頃、私たちは原爆投下に関する定説を根底から揺るがす事実を知り、この番組を制作している最中だったのです。およそ1年をかけた機密資料の検証からは、投下作戦は、終始軍がリードしていたことや、大統領が市民の頭上への投下に反対していたことが浮かび上がりました。オバマ大統領の訪問によって、原爆投下が“過去”となるのはまだ早い、世界が知るべきこと、向き合うべき事はまだ多くあるぞ、そんな思いに突き動かされ、スタッフ一丸となって挑んだ番組です。
NHK広島放送局 高倉基也