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放送文化基金賞

受賞のことば 第45回【番組部門】テレビドキュメンタリー番組部門

最優秀賞

NHKスペシャル
消えた弁護士たち 〜中国“法治”社会の現実〜

(NHK)

松田智樹さん  黒柳誠司さん

 私たちが出会った人権派弁護士は、誰もが強制的な土地収用に泣く庶民や不当解雇を訴える労働者など、弱い立場に苦しむ人々を助けたいという使命感に燃えていました。
 普遍的な価値と捉えられがちな法治や人権。中国では共産党の支配に批判的とみなされれば、容赦のない圧力がかかります。それでも自らの犠牲を顧みず、社会を少しでもよくしようと戦う弁護士がいることを世界の人々に伝えてほしい。そしてもっと関心を持ってほしい。それが私たちの取材を受け入れてくれた弁護士と家族の思いでした。
 厳しい環境の中で、一人ひとりの権利が守られる公正な社会を目指す彼らを取材することができたうえに、すばらしい賞を頂き光栄です。
NHK 松田智樹

優秀賞

ザ・ノンフィクション
犬と猫の向こう側

(フジテレビジョン)

山田あかねさん  谷茂岡稔さん

 この度は、とても重みのある賞をいただき、誠にありがとうございます。今、日本は、中学生以下の子供の数より、犬と猫の数が多いというペットブームです。一方で、年間6万匹以上の犬と猫が殺処分されているのです。私たちは、「猫ブーム」に警笛をならす中谷さんの姿を通して、動物の命の大切さを伝えるとともに、犬や猫しか頼るものがなくなってしまう、人々の孤立について伝えようと取材を続けてきました。番組の放送後、猫百匹を抱えて、借金のために自死を考えていた人から連絡があり、猫百匹は中谷さんが引き受けることにし、その人は生きる決意をしました。私たちは、今後も、ザ・ノンフィクションを通して、「今の社会」を見つめていこうと思います。
フジテレビジョン 張江泰之

奨励賞

BS1 スペシャル
カノン 〜家族のしらべ〜

(NHK水戸放送局)

安里愛美さん  西岡重徳さん

 毎日のように報道される児童虐待のニュース。その状況にまで至らなくても、家族の関係をめぐり悩みを抱える親子は少なくありません。“家族”って何だろう・・。私たちは、しおりさんと哲雄さん、英子さんという特別養子縁組で結ばれた3人を通して、「家族」について見つめてみたいと考えました。最初、ETV特集(59分)で放送したところ、大きな反響と多くの再放送希望が寄せられました。そこで90分の拡大版に制作し直したのが今回の番組です。3人が抱える悩みや葛藤、そして喜びには、家族の意味を見つめ、考える上でのヒントが散りばめられていました。1年以上に渡り取材にご協力を頂いた3人のご家族に、心より感謝致します。
安里愛美

奨励賞

山懐に抱かれて
(テレビ岩手)

遠藤 隆さん  齋藤恵子さん

 「おじいちゃん、おばあちゃんありがとう。お父さんお母さんありがとう。牛さんありがとう。いただきます。どうぞ召し上がれ!」家族一人一人、牛にも感謝をこめて頂く食事。ご飯にごま塩しかない日も多かった。貧乏で風呂にも入れず垢にまみれていた。1994年に初めてお会いした吉塚さん一家は、平成の世に戦後間もないころの家族の姿をしていた。しかしみすぼらしい姿とは裏腹に何か高貴なものを感じさせた。山地酪農という自然を活かした農業に興味を持って始めた取材だったが、テーマは子供の成長。そして親子の対立を通して、子どもだけではなく親も成長する「家族の成長」の姿がテーマになった。今、子どもは親を乗り越えようとしている。
テレビ岩手 遠藤 隆

奨励賞

ETV特集
静かで、にぎやかな世界 〜手話で生きる子どもたち〜

(NHK)

村井晶子さん  中尾潤一さん

 番組はノーナレーションにしました。これほど音がない60分はおそらくNHK史上初めて。ノーナレの番組は増えましたが、ほとんどの場合、登場人物の音声が効果的に使われます。しかし、今回は子どもも先生も、話す言葉は「手話」。音声なしで視聴者が最後まで見てくれるのか分かりませんでした。ただ、迷いはありませんでした。音はなくても言葉は溢れていて、子どもたちに力がありました。また、静かでにぎやかな世界をそのまま伝えたかった。彼らの世界を聞こえる人が解説することにも違和感がありました。障害を不自由と言うことがありますが、不自由は彼らか社会か——考えるきっかけをくれた明晴学園の皆さんと卒業生に感謝します。
NHK 村井晶子