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放送文化基金賞

受賞のことば 第46回【番組部門】テレビドキュメンタリー番組部門

最優秀賞

NNNドキュメント’19
「なかったことに、したかった。未成年の性被害①」
「なかったことに、できない。性被害②回復への道は」

(日本テレビ放送網)

左から有本泰紀さん(日本テレビ放送網)
古市礼子さん(ALIVE)

 性被害にあった子ども達が被害を「なかったこと」にすると知ったのは、今から10年ほど前。生きづらさに関する取材の中で、性的に傷つきながら「逃げない自分が悪い」「慣れているし平気」と被害を否定する女の子達と出会いました。言葉と裏腹に、彼女達は自分を「汚い」と語り、自傷行為や自殺未遂を繰り返していました。その後性暴力について学ぶ中で、そうした言動こそが被害の影響だと知りました。
 今回証言してくださったのは未成年期に被害を受け、今も痛みを抱え続けている20代から40代の女性達。「社会がまだ理解できていない問題を、子ども達が抱え込む現実を変えたい」と、語りづらい葛藤を言葉にしてくださった方々に深く感謝致します。
ALIVE 植田恵子

優秀賞

KNBふるさとスペシャル
19人を殺した君と
重い障がいのある私の対話

(北日本放送)

 「時代は逆戻りしたかと思って怖かった」
 八木さんからそのメールが届いたのは事件当日の事。“障がい者に対する世間の目が冷たかった過去”へと時代が逆戻りするのではないか、と恐れていました。・・・それから3年が経ち、被告と手紙を交わした事を打ち明けられた私は、八木さんの中で今もくすぶる思いを知ります。
 普段、ローカル局のニュースキャスターを務めている私にとって、地域の小さな声を社会に届けるのは大切な役割です。手も足も自分の意思で動かすことができない八木さんが自分の意志ひとつで行動する姿に、放送後「考えさせられた」と多くの感想を頂きました。この番組をひとりでも多くの方の心に留めて頂ければ幸いです。
北日本放送 武道優美子

奨励賞

NHKスペシャル
“ヒロシマの声”がきこえますか
〜生まれ変わった原爆資料館〜

(NHK広島拠点放送局)

安田哲郎さん(NHK広島放送拠点局)

 NHKと元安川を挟んで隣に位置する原爆資料館。初夏の頃から、ディレクターとカメラマンは、リニューアルされた資料館に毎日のように通いました。取材の目的は「遺品が語る物語」をたどること。しかし、寄贈したご家族の多くは亡くなり、お話を伺うことは簡単ではありませんでした。それでも、遺品の持ち込まれた経緯を粘り強く取材していくと、「あの日、持ち主の身に何が起きたのか」。遺族たちが、「それを本人の身代わり」として、いかに大切にしてきたのかが、浮かび上がってきました。
 キノコ雲の下には、私たちと同じように、夢を持ち、家族を愛した、ひとりの人間がいた。そうした思いを込めて、番組を制作致しました。
取材チーム

奨励賞

NHKスペシャル
昭和天皇は何を語ったのか
〜初公開・秘録「拝謁記」〜

(NHK)

 「天皇 運命の物語」の取材で新史料が見つかったと聞いたのは、2019年初め。書き起こした「拝謁記」を見た瞬間、間違いなく第一級史料と確信しました。それからわずか半年での番組化。日大の古川隆久先生を中心に翻刻作業を進めながら、再現ドラマの準備を始めました。社会部で宮内庁を担当してきたベテラン記者とETV特集で現代史に取り組んできたディレクター、二つが協力したことが大きな力となりました。そして、初代宮内庁長官役の橋爪功さん、昭和天皇役の片岡孝太郎さんお二人の重厚な演技、吉田裕先生ら研究者の的確なコメントにより、新発見の資料が現代によみがえりました。ご協力いただいた多くの方々に改めて感謝申し上げます。
NHKエデュケーショナル 塩田 純

奨励賞

土がくる 規制なき負の産物の行方
(CBCテレビ)

 ご評価をいただき、ありがとうございます。普段気にも留めない「土の山」。
 気づかないだけで実は住宅街や郊外のあちこちにできています。それは私たちが押し進める開発行為の残滓ともいえるものです。あまりの量に国もゼネコンも手を付けずうやむやにしてきた建設残土の問題を世に問おうと、一連の取材を行いました。
 行政の不作為に翻弄される夫婦、孤軍奮闘この問題を指摘しながら「遅すぎた」とこぼす元議員。そして必要悪だと話す残土の搬入業者。いずれの言葉も残土の問題の現実を物語っていて印象的でした。一連の取材によって行政が条例制定に踏み切り、国も初の全国実態調査に乗り出す事に繋がり、一定の意義はあったと考えております。
CBCテレビ 有本 整