受賞のことば 第47回【番組部門】テレビドキュメンタリー番組部門
- ★最優秀賞メ~テレドキュメント 面会報告 (名古屋テレビ放送)
- ★優秀賞BS1スペシャル レバノンからのSOS~コロナ禍 追いつめられるシリア難民~ (椿プロ、NHKエデュケーショナル、NHK)
- ●奨励賞タンデム自転車に夢をのせて (テレビ愛媛)
- ●奨励賞NNNドキュメント'20 見た目と見る目 (北日本放送)
- ●奨励賞クマと民主主義 ~記者が見つめた村の1年10か月~ (北海道放送)
★最優秀賞
面会報告
(名古屋テレビ放送)
日本社会と在留外国人は既に不可分です。警察担当の記者だった小島佑樹ディレクターは、取材先で「仮放免」という言葉をしばしば耳にし、実情を取材し始めました。カメラの前で次々と起こる事象が、入管行政の閉鎖性と不合理を私たちに突き付け、番組化への意欲を強くさせました。西山誠子さんは面会活動を通して、入管制度の根底にある“非人間性”に心痛め、日本人の問題として考えるよう訴え続けています。「小さな行い」と西山さんは謙遜しますが、信念に基づく一個人の行動が、絶望の淵に立たされた若者に希望をもたらし、やがては制度に血を通わせることに繋がるかもしれません。人が生来から持つ可能性の尊さが伝われば幸いです。
名古屋テレビ放送 村瀬史憲
★優秀賞
レバノンからのSOS
〜コロナ禍 追いつめられるシリア難民〜
(椿プロ、NHKエデュケーショナル、NHK)
2020年1月、シリア難民を取材するためレバノンを初めて訪れました。
その時、まさかコロナがこれほど世界を震撼させることになるとは想像もしていませんでした。
3月15日、空港も封鎖され私自身も出国の道を絶たれました。レバノンでは近年、極貧層が50%を超える中、臓器を売る難民さえもいました。そこにコロナが追い打ちをかけ差別や家庭内暴力が増え、自殺者までもでました。とりわけ弱い立場の女性と子供たちがしわ寄せを受けていました。5月に臨時便で帰国するまでの取材中、私の心に強く響いたのは、困難に負けまいと強く生きていこうとする彼女たちの姿でした。内戦から10年、世界から忘れられた難民の現状と彼らの生きる強さも少しでも伝えることができたならば、うれしく思います。
椿プロ 金本麻理子
●奨励賞
(テレビ愛媛)
取材を進める中で印象的だったのが、障がい者の方々の溢れんばかりの笑顔と家族の「私たちのことをもっと知ってほしい」という言葉です。振り返ると日々の生活では、障がいのある人との接点があまりにも少ないことに改めて気づかされました。人はひとりでは生きられません。気付かないところでも関わり合い、支えあっています。しかし、「自分さえよければそれでよい」という風潮、自助を求められる社会の中で私たちは知らず知らずのうちに心の中に“障害”という壁をつくってはいないでしょうか。
津賀さんが訴える心のつながりの大切さ、そして本当のバリアフリー社会を考えるきっかけになれば幸いです。
テレビ愛媛 篠原賢三
●奨励賞
見た目と見る目
(北日本放送)
河除さんが大きなショックを受けた出来事があります。それは高校時代、所属する部活にテレビ取材が入った時の話。後日、放送を見るとまるで自分の周りにキリトリ線があるかの様に存在が消されていたそうです。
翻って自分はどうか?日常の一コマを撮影する際、配慮したつもりで「見た目」に特徴がある人たちを画面の外に追いやってなかっただろうか?無意識の偏見と自覚なき差別。マイクロアグレッション(小さな攻撃性)と言うそうですが、差別する側にその認識がないだけに問題化されにくい現実があります。
解決するために大事なのは相手への共感と理解。心に潜む「無自覚な偏見」について考えさせてくれた河除さん家族に深く感謝致します。
ケイエヌビィ・イー 羽柴 泉
●奨励賞
〜記者が見つめた村の1年10か月〜
(北海道放送)
課題に向き合いながらも、村の方々の温かさに触れ、小さな村だからこそ、いつかクマ対策の鍵を見つけるのではと感じて取材を続けてきました。
放送後、猟友会の出動が再開し、クマ出没の予防策も進展しました。取材を始めて2年後、村を訪れた専門家が「対策は正しく進んでいる」と称え、村職員と住民が「クマといい方向で向き合いたいね」と一緒に喜んだ姿が印象に残っています。村が葛藤してきた歩みは、野生動物に悩むほかの自治体の参考になるものだと感じています。
何をどう伝えるべきか悩みながらの制作でした。それぞれの立場から、何度も想いを語ってくれた、村の方々あっての番組です。評価をいただき、スタッフを代表して感謝を申し上げます。
北海道放送 幾島奈央