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各地で行われた制作者フォーラムの模様を、参加者の声を交えて伝えます。

2016年12月8日

もっと  制作者フォーラムinふくい

レポート+寄稿

 2016年10月29日(土)、福井まちなか文化施設響のホールにて、北信越制作者フォーラム実行委員会と放送文化基金が主催する「北信越制作者フォーラムinふくい」が開催されました。
 このフォーラムには、新潟、長野、石川、福井、富山の5県にある全民放とNHK、計22局が協力し、制作者を中心に約50人が参加しました。
 初めに行われたミニ番組コンテストには、17作品が参加。長野朝日放送金子律人さんの「聴覚障害の先生に学ぶこと」が最優秀賞を受賞。審査員の、日笠昭彦さん(元日本テレビNNNドキュメントプロデューサー)、宮下奈都さん(作家)、高橋弘樹さん(テレビ東京 制作局プロデューサー・ディレクター)が、上映された作品一つ一つについて具体的なコメントを伝えました。
 引き続き、この3人のゲストによる「これからの“ロケぢから”」をテーマにしたトークセッションが行われました。「誰でもカメラを持ち、映像を記録できる時代になっている。その中でプロとして大事なのは取材力、すなわち“ロケぢから”である。それは、物事を掘り下げる力、現場でしか得られない喜怒哀楽を感じること、ハプニングやアクシデントを楽しむ力、取材対象者に関与する力である」という話や、「取材前の事前準備にしばられている人が多いが、事前準備とは現場でフリーになるため、すなわち現場の状況を考えて臨機応変に対応するための準備であるべきだ」という話がありました。また、制作者は「誠実であること」「作り手の個性を全面に出すこと」「まじめにつくること」が大事だという話など“ロケぢから”について大いに語られました。この後、場所を福井駅前の新スポット、ウェルアオッサに移して表彰式と懇親会が行われ、制作者同士、また審査員を囲んで熱心に語り合っていました。

 ミニ番組コンテストで最優秀賞を受賞した金子律人さん(長野朝日放送)、審査員の高橋弘樹さん(テレビ東京)、実行委員の橋本優さん(福井放送)に、フォーラムの感想をお寄せいただきました。

ミニ番組コンテスト最優秀賞受賞
スタートラインに立った日
金子 律人 (長野朝日放送 報道制作局報道部)

報道で社会を変える!そんな熱い思い、失いました。
でも、視聴者の心に何かを残したいとは思っています。
このVTRは耳の聴こえない中学校教師と健常な生徒たちの学校生活を記録したものです。
障害者の社会進出について考えてもらうのが狙いでした。
硬いネタをどこまで軟らかく調理できるかが腕の見せ所。
意識したのは、生徒の成長を丁寧に描くことでした。
障害を持つ先生の魅力や可能性を、視聴者に押し付けず自然に表現したつもりです。
番組を見た人が一瞬でも優しい気持ちになってくれれば、作り手としては大満足。
視聴者の心に何かが残れば、その人の人生は少しだけ変わるかもしれないから。
フォーラムに参加し、熱い作り手たちと語り合えたことが大きな財産です。
自分より若く、勉強熱心で、危なっかしい作り手に嫉妬や焦りを感じました。
もう一度、熱い思いを胸に。

ミニ番組コンテスト審査員
瑞々しいテレビの底力!
高橋 弘樹 (テレビ東京制作局プロデューサー・ディレクター)

 今回、フォーラムに参加して抱いた感想は、まず「とてももったいない」と思ったということだ。
 最優秀賞の『聴覚障害の先生に学ぶこと』をはじめ、『言葉を持たないちぎり絵作家』など地域に根ざしたからこそ、発見でき、取材にこぎつけることができた良質なドキュメンタリー作品。 そして、優秀賞の『ラジオパーソナリティがアポなし生中継 ずくだせlive』や、『1泊2日のアポなし修行旅!「あわよくば哲平」』など、地方局発ながら、全国どこでも応用可能な「新しい面白さ」を持つバラエティ番組。
 新鮮で初々しい魅力を持つ番組が、地方局で日々、これほど数多く生み出されていることを知って、改めてテレビの底力を感じたし、また知られざる面白い番組がまだまだ、日本全国に眠っていることが、率直に嬉しかった。
 しかし残念なのは、その多くが関東やその他の地域で見ることができないという点だ。知られざるものを、テレビを通じて発見する。これこそがテレビの醍醐味なだけに、非常にもったいないなと思った。
 ならば、キー局も地方局も広告収入が減って、新たな収益源を模索している今日、こういった番組が、有料でネット配信できるプラットホームみたいなものを、地方局が組んで出来上がればいいのに。
 そんな想いを、福井から帰る列車の中で抱いた。

実行委員
「2016北信越制作者フォーラムinふくい」を終えて
橋本 優(福井放送 制作・アナウンス部次長)

 テーマは「これからのロケぢから」。SNSが普及し誰もが簡単に映像を発信できる時代になり、また若者のテレビ離れの中で、ローカル局はどのように番組作りを進めればよいかを探る内容でした。
 審査員はそれぞれドキュメンタリー、バラエティー、日常生活を題材にする作家と、畑違いで、三者三様の見方があり、新鮮なコメントをいただけ大変参考になるものでした。
 取材対象との距離の取り方について日笠さんは「入り込むところと俯瞰する目を持たなくてはいけない」、取材姿勢について宮下さんは「自分の中にない一言がほしいので会いに行く、物語に引き込まれるのがその一言だ」、高橋さんからは「取材先で‘アクシデントを楽しむ力’、相手の魅力を引き出すため‘関与する力’が必要」などと、なるほど!とうなづくアドバイスが盛りだくさんでした。
 参加された北信越のディレクター・記者の皆さんは、フォーラムでのアドバイスを糧に、ますます制作意欲を高めて良い番組を作っていくことでしょう。