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各地で行われた制作者フォーラムの模様を、参加者の声を交えて伝えます。

2019年1月28日

もっと  制作者フォーラム in なごや

レポート+寄稿

 2018年12月14日(金)、NHK名古屋放送局R3スタジオにて、愛知・岐阜・三重制作者フォーラム実行委員会と放送文化基金が主催する「愛知・岐阜・三重制作者フォーラムinなごや」が開催されました。
 フォーラムには、愛知・岐阜・三重3県にある全民放テレビ局とNHK、計10の放送局が協力し、制作者を中心に約130名が参加しました。
 初めに行われたミニ番組コンテストには、10作品が参加。審査員の小松純也さん(フジテレビジョン 人事局付局長待遇/共同テレビジョン 第2制作部長)、鎮目博道さん(テレビ朝日 報道局クロスメディアセンター/AbemaTV編成制作局 制作部プロデューサー)、藤村忠寿さん(北海道テレビ 放送コンテンツ事業室 エグゼクティブディレクター)が、上映された10作品についてそれぞれ講評を述べました。
 引き続き、事前に参加者から募った悩み・疑問などをゲスト3人がこれまでの経験を踏まえて答えるかたちでトークセッションが行われました。
 <特集するネタを探す方法>については、「ネット検索に頼らず、自分の目で見て感じることが一番大事だが、本屋さんで背表紙や帯封をじっくり眺めていると人々の考えが見えてくることもある。ただ自分は、どんなものをもってきてもネタになる仕組み、フォーマットをつくることに力を入れている。」(小松)、「『水曜どうでしょう』も、どこへ行くかどう決めているのかと聞かれることがあるが、自分が行きたいところに行くということに尽きる。行きたいという情熱が伝われば、失敗しても面白がってもらえるし、どこへ行くかは問題ではなくなる。小松さんの言うように、そういうシステムを作ることが大事。」(藤村)、などのアドバイスがありました。<SNSでの告知宣伝の方法>については、「AbemaTVの場合は、出演交渉の時に、SNSでの拡散もお願いしていて、“こういう文面で放送の前までに何日に何回つぶやくこと”を条件にした上でギャラをお支払いしている。これはテレビ局にはない発想だったが、サイバーエージェントでは当たり前のことだと言われた。」(鎮目)など、番組制作時に応用できそうなヒントの提示もしていただきました。その他に、<取材対象との距離感で気を付けていること>や<予算の少ない中で、面白い番組を作る工夫やアイデア>などのテーマで存分に語っていただき、疑応答の時間にはたくさんの質問が投げかけられました。

 ミニ番組コンテストで優秀賞を受賞した中のお一人、杉山実さん(岐阜放送)、ゲストの鎮目博道さん(テレビ朝日 報道局クロスメディアセンター/AbemaTV編成制作局 制作部プロデューサー)、実行委員の東山武明さん(NHK名古屋放送局)に、フォーラムの感想をお寄せいただきました。

優秀賞受賞者
形のない“発想力”を表現
杉山 実(岐阜放送 報道制作局 制作ステーション)

 今回取り上げたのは、岐阜県瑞浪市の山奥で活動している彫刻家。独創的な世界観と奇抜な発想から生まれる作品は、1度見たら忘れることができません。特徴である奇抜な発想力に注目しながらこの方の人物像に迫りました。私が出品した作品では、形のない“発想力”について伝えるために作業場に何本も置いてあった木から1本選びその木からどのようなイメージが湧いてくるかをその場で伺いました。
 フォーラムでは、各局の作品を拝見させていただき、とても刺激的な1日になりました。また、昔から見ていた番組を担当していた憧れの方たちが審査員として自分の作品を見ていただき講評を述べていただけることが本当に幸せでした。その中で、数ある作品の中から自分の作品を評価していただけたこと大変光栄に思い、励みになりました。
 今後もこの賞に恥じぬよう精進し多くの人に楽しんでもらえる作品を作っていきたいです。

ゲスト
「新しいテレビ」は必ず生まれてくる、と感じた一日。
鎮目 博道(テレビ朝日 報道局クロスメディアセンター/AbemaTV編成制作局 制作部プロデューサー)

 僕は昔から「職人」と呼ばれる人たちが大好きだ。なすべきことを深く理解し、実直に仕事を遂行する。クオリティにこだわり、手を抜かず、一方で新しさを常に追求し自己研鑽を欠かさない。

 この間のフォーラムで僕は、参加者の皆さんに「職人の志」を感じた。真面目で、創意工夫がなされたVTRが多かったと思う。そんな皆さんと、小松純也・藤村忠寿両先輩に、僕ももっと勉強しないとダメだなと思わされた一日だった。

 テレビは万人を虜にする憧れの存在でなければならないというのは東京の業界人が作り上げた幻想だ。これからのテレビは様々な興味関心を持った人向けに、一部の人々に深く刺さるものになっていくはずだ。日本各地から魅力的で多種多様なテレビが生まれてくる…若い職人たちと名古屋で出会ってそうした時代の到来を強く感じた。

実行委員
テレビは“これから”
東山 武明(NHK名古屋放送局)

 前回幹事の東海テレビ放送様からバトンを引き継ぎ、2回目となる愛知・岐阜・三重制作者フォーラムを無事開催することができました。多大なご協力、ご尽力をいただいた放送文化基金のみなさま、各放送局のみなさま、審査員のみなさまに厚く御礼申し上げます。
 “マスゴミ”などとメディアの存在価値が問われる時代にあって、志の高い“テレビマン”たちが組織の壁を超えて作品をぶつけ合い、意見をぶつけ合い、お互いを高めることができる場を提供できたことに、誇りを感じています。
 各放送局の作品や3人のプロデューサーの熱量の高い講評・トークセッションを通して、テレビは“文化”として進化している途上にあるのだと感じました。テレビにできること、すべきことはまだまだある、テレビは“これから”だと、自分自身も胸が高鳴った1日でした。