HBF 公益財団法人 放送文化基金

文字サイズ:

HOME読む・楽しむもっと 制作者フォーラムinふくおか

読む・楽しむ もっと制作者フォーラム
各地で行われた制作者フォーラムの模様を、参加者の声を交えて伝えます。

2019年12月25日

もっと  制作者フォーラム in ふくおか

レポート+寄稿

 2019年12月7日(土)、NHK福岡放送局よかビジョンホールにて、九州放送映像祭実行委員会と放送文化基金が主催する「九州放送映像祭&制作者フォーラム」が開催されました。
 このフォーラムには、九州・沖縄の全民放テレビ局とNHKが協力、制作者を中心に、約80名が参加しました。
 初めに行われたミニ番組コンテストには、32作品が参加。ミニ番組を順に視聴し、審査員の大園康志さん(CBCテレビ報道部専任部長)、藤村忠寿さん(北海道テレビ放送コンテンツ事業室エグゼクティブディレクター)、渡辺考さん(NHKエデュケーショナル特集文化部部長プロデューサー)がそれぞれの番組について講評を述べました。
 引き続き、審査員の3名と司会・進行役に松尾幸一郎さん(テレビ西日本アナウンサー)と齊藤遥陽さん(福岡放送アナウンサー)を迎え、「足下から世界を変える!ローカル局の生き様とは?」をテーマに、会場から事前に集めた質問に答えていく形でトークセッションが行われました。
 はじめに、司会の松尾さんより「ローカル局でどういう思いで番組作りをしていますか?」という質問があり、藤村さんは「番組制作を始めたころ、周りがみんな“テレビ番組”ではなく、定型の“ローカル番組”を作っていた。僕は“ローカル番組”ではなく、単純に面白い番組を作りたいと思って作ってきた。『水曜どうでしょう』も自分はもともと旅が好きで、旅行先でのハプニングって面白いよね、と思って企画にした。」とお話がありました。
 また、「ローカル局の環境は大きく変化しているが、地域情報の徹底と全国への視聴発信、どちらに軸を置くべきですか?」という質問に対しては大園さんから「放送局には生命・財産を守る役目があって、災害報道をしっかり行うことがローカル局の役割として非常に大きいと思っている。現在はプラットフォームがたくさんあって、放送だけで終わりではなく、英語版を作って海外の方にも見てもらうこともできるし、飛行機内で上映してもらうこともできる。面白いものや、これだけは伝えたいと思うものを魂込めて作っているとたまに琴線に触れるものができる。それをいかにアプローチして発信していくかが大事。」とローカル局で番組を作る心構えについてアドバイスをいただきました。
 渡辺さんからは「台本を書いた時点でドキュメンタリーじゃない。発見がないと自分たちも面白くない。これはいけると思った時点で取材はやめて、カメラマンと音声と旅に出て、人に会って、その場その場で感じたことを番組にしていく。それを可能にするために、スタッフ間で気心が知れていることは重要。」と制作のヒントをいただき、多様なお話を聴くことができました。
 会場ではメモを取っている方が多くいて、懇親会で審査員に質問の列ができるなど盛り上がりました。

 ミニ番組コンテストでグランプリを受賞した大石康允さん、審査員の大園康志さん、実行委員の石田涼太郎さんに、フォーラムの感想をお寄せいただきました。

グランプリ受賞者
「救世主は色白理系男子」
大石 康允(福岡放送)

 廃部状態の九大相撲部にやってきた救世主はスポーツ経験の無い理系男子。「なぜ相撲をとるのか」素朴な疑問から始まった密着でした。話をすればするほど、とにかく変。一本筋が通っている・・・ようで、通ってない。それでも、何気ないひと言にハッとさせられる。気づけば「変な奴」から「愛おしい奴」に私の心は変わっていました。
 そんな愛すべき理系男子を、視聴者の皆様にも愛して貰いたい。制作者のエゴかもしれません。主人公の理屈っぽさ、不器用さ、弱気、その全てが愛おしいと思って貰えるよう取材・編集を心がけました。今回グランプリを頂いた事、本当に光栄な事ですが、それ以上に藤村さん(水曜どうでしょう名物D)に、その点をお褒め頂けた事何より嬉しく思います。「人は人によって心揺さぶられる」藤村さんの言葉を大切にこの賞に恥じない制作を今後も行っていきます。

ミニ番組コンテスト審査員
「巨匠の故郷に集う作り手たちとともに」
大園 康志(CBCテレビ 報道部専任部長)

 44回目の九州放送映像祭&制作者フォーラムは、RKB毎日放送の巨匠、故木村栄文ディレクターの番組研究会が母体。背筋の伸びる思いで参加した。晩年の木村さんに手紙を頂き、ディレクター作品『山小屋カレー』のことをお褒め頂き、背中を押してもらったことが思い出された。32作品を視聴した番組コンテストでは、5分以内の尺がルールであるが故、作り手の思いを審査する側がちゃんと汲み取れるのか?という力を試されているかのような時間でもあった。誠に勝手な発言をお許し頂きたいと思いつつ、放送文化の多様性を楽しませて頂いた。果たして木村さんの故郷で未来輝かしい作り手の皆さんに向けて恩返しは出来たのか?トークセッションでは、ローカル局の同志として(世界に打って出ることは可能だ)という思いを述べた。戦いの場、ビジネスの場がテレビの中だけではない次代をともにワクワクしたいと思う。

実行委員
「どこで生きていても、やはり自分。という時代」
石田 涼太郎(NHK福岡放送局 放送部制作チーフ・プロデューサー)

 今回44回目を迎える九州放送映像祭。ゲストとしてお呼びしたのは、北海道・中部、そして九州で輝かしい実績を誇られてきたお三方。その皆様に、トークセッションとしてお話し頂いたのが、「足元から世界を変える!ローカル局の生き様とは?」というエモさに振ったテーマでした。が、そこは一癖も二癖もある皆様。「ローカルとか言ってるからダメなんだ!」「やりたいことをやるのは、どこに行っても同じ!」、刺激的かつ爆笑につぐパワーワードをたくさん頂きました。プロデューサーの末席に名を連ねるものとして、もはや世界とはどんな方法でもつながれるこの時代、逆説的に“個”が問われているのを実感するとともに、そうは言っても、皆さん自分の身の周りへの愛があふれているな・・・と、しみじみと感じ入りました。引き続き、九州沖縄も、がんばります。ありがとうございました!