もっと 制作者フォーラム in にいがた
レポート+寄稿
2022年12月15日(土)、新潟日報メディアシップ日報ホールにて、北信越制作者フォーラム実行委員会と放送文化基金が主催する「北信越制作者フォーラムinにいがた」が開催されました。
このフォーラムには、北陸3県と長野、新潟にある全民放とNHK、計22放送局が協力し、制作者を中心に、約70名が参加しました。また今回は、オブザーバーとして、山梨、静岡の一部の放送局も参加しました。
初めに行われたミニ番組コンテストには、19作品が参加。
藤井春来さん(KNB北日本放送)の『いっちゃんKNB「51年間と最後の1日」』が最優秀賞を受賞。審査員の伊藤隆行さん(テレビ東京制作局エグゼクティブプロデューサー、クリエイティブ制作チーム部長)、笠井知己さん (中京テレビ放送コンテンツ制作局制作G副部長)、川中 優さん (TSKさんいん中央テレビコンテンツプロデュース局、コンテンツプロデュース部副部長)が、上映された作品一つ一つについて講評を述べました。
ミニ番組コンテストに引き続き、審査員を務めた3名によるトークセッション~ヒットメーカーが語る「テレビの逆襲」~が行われました。
インターネットの普及により、可処分時間をテレビ以外に使うことが増え、視聴の形も積極型視聴へと変容している。その視聴行動をテレビのコンテンツで変えるのは不可能であろう。ただ、テレビのパワーが落ちたわけではない。テレビは、もともと受動型メディアで、意図していない人にも届く。それがテレビの強みでもあるという話から始まり、様々なコンテンツが溢れる今、テレビコンテンツの存在意義をもう一度見つめ直す会となりました。
コンテストで上映されたミニ番組を振り返って「各番組、地域に対する温かい目線を感じました」という講評があり、「そこに生きている人に対して、いかに優しい目線を向けてつくっているかがテレビには必要」という意見や、「これまでローカル局の番組が全国のレギュラー番組になることはなかった。それが配信で多くの人に見てもうらことができる時代になった」という意見が出され、さらに、「コンテンツが増え、競争相手がたくさんいる時代に突入したけれど、逆につくり甲斐がある」という話題になり、“伝えたいメッセージ”を意識して、“どういう意義”を持ってつくるのかが大事になってくるという議論がありました。
新型コロナウィルス感染症の拡大防止のため、懇親会は行うことができませんでしたが、トークセッション後に名刺交換会が行われ、積極的にゲストの列に並ぶ若手制作者の姿が見られました。
ミニ番組コンテストで最優秀賞を受賞した藤井春来氏さん(KNB北日本放送)、審査員の川中優さん(TSKさんいん中央テレビ)、実行委員の加藤美樹さん(テレビ新潟放送網)に、フォーラムの感想をお寄せいただきました。
藤井 春来(北日本放送 メディア本部 コンテンツ局 ディレクター)
今回のフォーラムのテーマである「テレビの逆襲」
トークセッションにてヒットコンテンツを生み出し続けている伊藤さん・笠井さん・川中さんが口にされていた言葉にタイトルの真意が滲んでいたように感じました。
「テレビであることの意義を一人ひとりが考えること」
「半径500メートルに届く熱量をもつものを作る」
「一番観たいコンテンツしか観られない」
多くのコンテンツが横並びになった今だからこそ、テレビはテレビの強みでコンテンツと勝負する必要を改めて感じました。
若手ディレクターや記者が求められていることは観る人の心を動かすコンテンツを生み出すことに尽きると思っています。
今回の機会をきっかけに一層精進していきます。
川中 優(TSKさんいん中央テレビ コンテンツプロデュース局 コンテンツプロデュース部 副部長)
とても心が忙しい一日でした。
行った事もないお店の、会った事もない店主の想いに涙したり。知らない町のブロッコリーの出荷に芸人がアテレコする様子に笑ったり。そして、数分の映像で人の心がこんなにも右へ、左へ、動かされる事を実感。
19作品の熱量を受け取った後は「テレビの逆襲」という少し物騒なテーマのトークセッション。僕にとっても憧れの制作者とのお話。考えることが多くありました。
一日を通して感じたのは「今、ローカルテレビは最も面白い時代」ということ。
放送エリアにしか届ける術がなかった僕たちローカル局は、ネットを通して全国に映像を届け、視聴者が行った事もない町の映像で心を動かすことも出来る時代。一方、他系列と争うだけでなく、ヒット映画や、海外ドラマ、個性的なYouTube…無数のコンテンツから選ばれないと再生すらされない時代。
こんな時代にワクワクしながら、心を動かすコンテンツを制作していきたいと想いを強くした一日でした。
コロナ禍に阻まれ、4年ぶりの開催となった北信越制作者フォーラム。今回は、初めて山梨・静岡をオブザーバーに迎えました。皆様のご協力で無事開催できたことにほっとしています。
ネット上には動画コンテンツが溢れ、テレビ離れが進む時代。“テレビだからできること”をとことん考える一日にしようと新潟の各局で準備を進めてきたおよそ半年間でした。ミニ番組コンテストでは制作・報道など様々なジャンルの作品が集まりましたが、入賞した作品に共通することは“人の心を動かすもの”だったと感じています。変わりゆく時代の中でも“変わらないもの”がきっとあって、それが私たちの作品作りにヒントを与えてくれるのだと学ばされました。熱い思いを持ってテレビと向き合う若手制作者の皆さんにお会いできてとても刺激になりました。ご参加いただいた皆様ありがとうございました。