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2019年4月4日

NHK文研フォーラム「検証<100パーセント>朝ドラ!!
~視聴者と歩む 過去・現在・未来~」に行ってきました!

レポート

 2019年3月8日(金)に千代田放送会館(東京)で行われた「検証<100パーセント>朝ドラ!! ~視聴者と歩む 過去・現在・未来~」に行ってきました!
 これは、3/6-3/8(金)の三日間にわたって開催されたNHK文研フォーラム2019の10個あるシンポジウムの一つです。
 今回のシンポジウムには、稲垣恭子さん(京都大学大学院教育学研究科教授)、藤田真文さん(法政大学社会学部教授)、鈴木謙介さん(関西学院大学社会学部准教授)、矢部万紀子さん(コラムニスト)、若泉久朗さん(NHK札幌放送局長・元ドラマ部長)がパネリストとして登壇し、朝ドラについて熱い議論を展開しました。
 会場に着くと、これまでに朝ドラで使用されていた音楽がBGMとして流れていて、いつものシンポジウムにあるような“お堅い”雰囲気とは違う印象でした。会場には約70名が参加していました。

「じぇじぇじぇ!?」ブームの火付け役

 開始早々、歴代の朝ドラ99作品を6分で振り返るVTRが流れ、その完成度から「これで終わってもいい」とパネリストからの声が聞かれる一幕もありましたが、全体を通してトークテーマも多岐にわたり、内容も充実していました。
 特に印象深かったのは、「じぇじぇじぇ!?」のフレーズで有名な『あまちゃん』(2013 年前期放送)がどのようにブームを巻き起こしていったのかというお話です。 
 『あまちゃん』に関する分析を文研データ班がツイッターのツイート数をもとに検証を行いました。『あまちゃん』の視聴率平均(初回~最終回)が20.6%だったので、比較対象として、『梅ちゃん先生』(2012年前期放送、20.7%)が選ばれました。放送開始から第26週時点で『あまちゃん』に関するツイートが一人当たり7件のツイート(613万ツイート/アカウント数88万個)であったのに対し、同週時点の『梅ちゃん先生』は一人当たり2.2件のツイート(53万ツイート/アカウント数24万個)を記録していました。また、『あまちゃん』は一人で100件以上ツイートした人が7,261人存在し、これは0.8%の人が全体の4割を占めるほどの発言をしていたことになります。
 この熱心な層が火付け役となり、関心の薄かった層までも呼び込みブームを生み出していったのではないかと文研データ班は結論付けました。
 このフォーラムでは、このような形でツイッターやさまざまなアンケートをもとに視聴者を分析していきました。(「朝ドラらしい朝ドラは何ですか」「朝ドラを視聴する理由」など)

可視化される“熱”

 シンポジウムのあと、鈴木謙介さんと直接お話しする機会がありました。鈴木さんは、ネットメディアについて研究をされていて、私自身、鈴木さんの著書を2冊ほど読んだことがあったので、大変貴重な機会でした。
 今回のフォーラムに関して朝ドラの視聴率が好調な理由についてお聞きしました。鈴木さんは、「今までの視聴率の枠組みではとらえきれない“熱”のある層が存在している。この層にテレビはどのように訴えかけていくのかを考えていく必要がある」と語り、視聴頻度にばらつきがあること、そしてその中でも熱のある層が現在の視聴率を牽引している構造について詳しくお話して頂きました。
 この鈴木さんの言葉を受け、思えば映画業界には、『桐島、部活やめるってよ』(2012年)、『この世界の片隅に』(2016年)、そして『カメラを止めるな!』(2017年)など、小さな劇場からスタートしてネットで話題になり、大ヒットした映画は数多くあることを思い出しました。現代はコアなファンが熱心に情報を収集・発信・拡散することによって、ブームの流れを可視化できるようになった時代です。彼らに“着火”できれば、自然と解説動画が上げられ、感想や批評コメントが様々な形でネットに残っていきます。ネットで流行っていることが彼らのツイートを引用しつつネット記事になっていることもしばしば目にします。こうしたところから視聴者は情報を収集し、見るか見ないかの判断をしていくことが多くなってきました。
 視聴率の話題ばかりがクロースアップされる世の中ですが、昨今のネット媒体によって可視化された熱心なファンは確実にその中に埋もれてしまっています。彼らの心に刺さるようなネタをいかに追求していくかが今後のテレビ業界のテーマになるだろうなと感じました。 今回の朝ドラ分析からさまざまな視聴者の存在が浮き彫りになりました。私はどのように視聴していたのか、振り返るきっかけになりました。

(事務局 鈴木祥吾)