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2019年4月23日

脚本アーカイブズ『脚本で振り返る「平成」という時代』
に行ってきました!

レポート

 2019年3月23日(土)に放送文化基金が後援している一般社団法人日本脚本アーカイブズ推進コンソーシアム主催の『脚本で振り返る「平成」という時代』(場所:法政大学ボワソナードタワースカイホール)に行ってきました!

 第一部は吉見俊哉(東京大学大学院情報学環教授)さんの『平成をアーカイブする』と題した基調講演を聞きました。
 吉見さんは、「平成時代はバブル崩壊や、東日本大震災における原発事故など昭和時代の成長から陰りが見え始め、政治不信や就職氷河期など『失われた30年』とも表される暗い時代である」と語り、社会学の見地からこれらの事象を紐解いていきました。そしてこの平成時代を「失敗」の時代と位置づけ、それを教訓としてアーカイブしていく重要性を説きました。

 第二部のパネルディスカッションでは、鎌田敏夫さん(脚本家、日本脚本家連盟理事長)、中村雅俊さん(俳優・歌手)、藤田真文さん(法政大学社会学部長、NPO放送批評懇談会 専務理事)、岡室美奈子さん(早稲田大学演劇博物館館長)、吉見俊哉さんがパネリストとして登壇し、中村さんが主演した作品を中心に平成時代について議論を交わしました。
 ディスカッションの前半では、中村さんが主演を務め、鎌田さんが脚本を書いた『俺たちの旅』(1975年)や、中村さんが楡野仙吉役で出演した『半分、青い。』(2018年)のセリフから時代の空気を語り合う場面や、パネリストが過ごしたバブル時代の様子、岡室さんによる平成ドラマ史30年を振り返るコーナーなどがありました。
 また後半では、東日本大震災で被災した宮城県女川町出身の中村さんが地震直後に故郷で見た光景や現在の復興に向けて取り組む様子についてお話しされました。パネリストらの会話の中で、「被災地では震災を経験していない子どもたちが小学校へと入学し、風化させない取り組みは一層重要性を増している」といった話題になる場面があり、吉見さんは「アーカイブしていくことをアーカイブする必要がある」と総括しました。「ただ単純にバブル崩壊や東日本大震災で得た教訓を記録として残せばアーカイブになるのではなく、人々の教訓として記憶に存在していなければ意味がないのではないか。記憶に残していく試み(アーカイブしていくこと)を続けていこう(アーカイブする)」と語りました。
 この吉見さんの言葉はシンポジウムの最後に語られたということもあり、印象に深く残っています。今後は、ただただストーリーを追いかけるのではなく、脚本の中に秘められた時代の空気感を感じ取りながらドラマを視聴していきたいと思います。

(事務局 鈴木祥吾)