HBF 公益財団法人 放送文化基金

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平成28年度助成金贈呈式

 放送文化基金の平成28年度の助成対象が決まり2017(平成29)年3月3日、ホテルルポール麹町で助成金贈呈式が開催されました。
 はじめに末松理事長が「メディアの役割や可能性を研究し、新たな手法や技術を生み出していくことは、放送文化を発展・向上させる上で欠かすことの出来ない、極めて重要な事だと思う。助成金を有効に使って頂き、プロジェクトを着実に進めて頂きたい」と挨拶。引き続き、「技術開発」の今井秀樹審査委員長と「人文社会・文化」の黒崎政男審査委員長から今回の審査について概況報告がありました。
 平成28年度は、技術開発30件、人文社会・文化74件の合わせて104件の申請があり、審査の結果、技術開発12件、人文社会・文化29件の合わせて 41件、総額6,000万円が採択されました。助成対象に選ばれた1人1人に末松理事長から目録が手渡され、電気通信大学大学院准教授 策力木格さんニューヨーク州立大学助教授 山本昌広さんの2人からそれぞれ、部門を代表して挨拶がありました。
 助成対象に決まったプロジェクトは、2017年4月から2018年3月までの一年間、研究、開発、調査、事業等を実施し、報告をまとめることになります。


今井委員長

黒崎委員長

技術開発部門 代表挨拶

自律分散IoT技術を活用した放送システム
電気通信大学大学院情報理工学研究科 准教授 策力 木格

 IoT(モノのインターネット)端末の増加により、インフラに依存する通信方式(例えば、衛星放送、携帯電話ネットワーク)だけでは情報配信(特に映像)に必要な通信品質を保証することが難しくなります。本研究では、自律分散通信を活用したIoTプロトコルの研究と、それを利用した映像配信システムの研究開発を行います。
 自律分散IoT技術を利用した放送システムを設計するためには、劣悪な通信環境を考慮する必要があります。高密度環境における無線(本研究では無線LANを検討)通信品質劣化問題は重要な課題となっています。無線LANの物理層、メディアアクセス制御の基準であるIEEE 802.11では、各送信端末で自律分散的に送信制御を行うため、高密度環境においては、パケット衝突が起こり、無線チャンネル利用効率が低下します。またマルチホップ通信において高いエンドツーエンドスループットを実現するのは難しいといった問題が存在します。そこで本研究では、マルチホップ環境においては、長いTCPフローではなく、複数の1ホップのTCPフローを利用してデータの送信を行う方式を提案します。高密度環境では、自律分散的にクラスタリングを行い、クラスタヘッド(中継ノード)のみによりパケットを中継することで送信者の数を削減し、より効率的な無線リソースの利用を図ります。
 提案技術を利用することで、自律分散ネットワーク環境において、コンテンツの撮像・生成、記録、編集、保存等を行うことが可能となり、事前設置したインフラに依存しない放送が可能となります。また提案するインフラなし放送技術は既存放送技術とは相互補完関係であり、大規模イベントにおける情報配信、災害時情報共有、高度交通システム、監視システム等、様々な分野における応用が期待されます。

人文社会・文化部門 代表挨拶

マルチタスク・セカンドスクリーンのニュース理解への影響
ニューヨーク州立大学 オルバニー校 助教授 山本 昌広

 本研究では、ニュース視聴の際のマルチタスク行動が、視聴者のニュース情報処理、そして知識取得にどのような影響を及ぼすのかについて検討します。現在の情報技術社会では、テレビニュース視聴の際のマルチタスク行動が習慣化しつつあります。例えば、多くの視聴者は、ニュース番組を見ながら、フェイスブック、ツイッター、スマートフォンのアプリ等、ニュースの理解とは種の異なる、他メディア作業を並行して行うことが頻繁にあります。その一方で、ニュース番組を視聴しながら、パソコン、タブレット等、別の機器を使い、ネット上で報道情報に関する情報の探索、他者と議論を交わす等、マルチタスク行動の一種である、セカンドスクリーン、と呼ばれる行動も多々見受けられます。
 限界容量モデルに基づく先行研究では、マルチタスク行動は、情報処理・理解へ悪影響を及ぼすことが報告されています。ただ、ニュース番組視聴に関連したマルチタスク行動、すなわちセカンドスクリーンも同様に似たような悪影響を及ぼすのかについてはまだ明らかになっていません。ニュース番組視聴との補完性により、ニュース情報処理・理解を促進する可能性もあります。これらの背景を基に、マルチタスク行動と、視聴者のテレビ報道情報処理、またそれに付随する時事知識との関連性について調査を行います。
 現在、数々のテレビ報道番組が、ソーシャルメディアを利用し、視聴者のニュース番組・情報に対するエンゲージメント向上に努めています。こうした試みは、視聴者との双方向コミュニケーション、議論の活発化を促進し得る一方で、視聴者の集中を妨げ、体系的ではない表面的な情報処理・理解に繋がる可能性もあります。こうした観点から、本研究は、放送文化に重要な関わりを持ち、テレビ報道の番組制作に対しても有用な知識を提供できるものと考えています。

懇親会の模様


藤井理事 乾杯

助成対象に決まったプロジェクトは、平成29年4月から平成30年3月までの一年間、研究、開発、調査、事業等を実施し、報告をまとめることになります。