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最新の開催案内・開催報告

話題の放送番組を見る会・語る会(第10回)開催報告
 平成21年11月7日(土)、青森市のアウガ「男女共同参画プラザ」で、「2009北日本制者フォーラムinあおもり」と同時開催された。ゲストに、札幌テレビ放送の勝嶌早苗氏と 静岡放送の岸本達也氏を迎え、上智大学教授の音好宏氏の進行で行われた。会場には、放送関係者を中心に市民を含めて、約70名が集った。

つぎの2本の作品を視聴後、それぞれの制作者が自らの作品を語り、会場参加者と意見交換を行った。

『命の値段〜がん患者、闘いの家計簿』 札幌テレビ放送
(2009年5月30日(土)放送)
勝嶌 早苗(かつしま さなえ)氏(札幌テレビ放送)
<番組あらすじ>
 番組を作ったきっかけは、ひとりのがん患者との出会いだった。その女性は、患者の集いで、経済的な負担で家族を苦しめているつらさを切々と語り始めた。取材を進めると、治療費で苦しんでいるがん患者がいかに多く、そして、お金がなくて延命を諦める患者を前に、医師も苦悩していることがわかった。日本人の死亡原因第一位のがん。抗がん剤は新薬ほど高価になるが、国のがん対策は経済問題に踏み込んでいない。余命は金で買うのか・・・。 
 希望を失いつつある患者の高額医療費負担に、国も、医師も、保険会社も解決を見出せずにいる現状に対して問題提起する。
<「北日本制作者フォーラム」番組部門 大賞受賞>


 勝嶌氏は、がんの番組を制作するにあたり、医師が足りない、地方では良い治療が受けられないなどの問題があるなかで、金銭問題に焦点をあてることに迷いがあったが、患者さんが本当に困っていることを、私たちの知らない治療費の問題があることを伝えなくてはいけないのではないかと思ったと述べた。
 コーディネーターの音氏は、北海道のひとつの事例を取り上げながら、日本全体の問題、ひいては世界の問題につながっている番組だと話した。


『日本兵サカイタイゾーの真実〜写真の裏に残した言葉』 静岡放送
(2009年5月8日(月)放送)
岸本 達也(きしもと たつや)氏(静岡放送)
<番組あらすじ>
 いまから64年前、太平洋戦争末期最大の激戦地・硫黄島で日本兵が米兵に託した写真がある。日本兵の名は「サカイタイゾー」。米軍に投降したサカイ氏は流暢な仏語で尋問に応じたという。番組では、日米双方の生還者の証言、サカイ氏の尋問調書などを元に、その戦争観に迫った。サカイ氏は写真を託す際、裏にある言葉を書き残している。これはフランスの詩人・ボードレールの『悪の華』の一節だと思われる。そこには、彼自身の「戦後」が暗示されていた――。1枚の写真から浮かび上がる日本兵サカイタイゾーの真実を見つめた。
<日本民間放送連盟賞 番組部門テレビ報道番組 最優秀賞受賞>
<「地方の時代」映像祭2009グランプリ受賞>


 サカイタイゾーさんは、戦地で米国に協力することで生還する。サカイさんの行動が良かったのか悪かったのか・・・。その結論は出ないが、サカイさんも被害者なのだと岸本氏は話した。戦後、家族はサカイさんの行動を知らずに過ごしてきたので、そのことを家族に伝えることにためらいがあったが、もしサカイさん本人が家族に話していたら、サカイさんは戦後をもう少し楽に過ごせたのではないかと思うと岸本氏は語った。
コーディネーターの音氏は、歴史を語ることによって、今を語ることにつながると話した。




 ◆◇◆興奮の2日間!◆◇◆

 ゲスト 勝嶌 早苗 氏

 青森から戻る飛行機の中で、私は感激、感動・・・様々な気持ちが入り混じり、高揚していました。これ程系列を超えた制作者同士、純粋な番組への思いを重ね合わせられたことはなかったと思います。つい今しがた名刺交換をした間柄なのに、腹を割って話せたこと。私の番組を題材に、皆さんが率直に意見をしていただけるという、これまた初めての経験。熱心な疑問やアドバイスと共に大きなエネルギーをいただきました。それは私に、普段は日々の仕事に忙殺され、時としてつい見失いがちな“原点”に帰せてくれました。「番組を作れるということは幸せなんだ」ということ。興奮状態だったのはそのせいでしょう。そのとき、また新たな目標が密かに芽生えました・・・。わずか2日間ですが、共に過ごすことができた皆さんとは繋がっている気が強くしています。北日本の各地、番組へのあくなき追求をしている皆さんのことを思って、私も進んでいきたいと思います。本当にありがとうございました。


<制作者プロフィール>
勝嶌 早苗(かつしま さなえ) 札幌テレビ放送

1975年生、札幌市出身。99年札幌テレビ放送入社、報道部に配属。6年あまり道警記者クラブで事件取材を続けたのち道政を担当。その傍ら、ローカルニュース番組「どさんこワイド」の特集でがんの治療最前線を担当したことが、がん取材へのきっかけとなった。今回の番組が「2009 北日本制作者フォーラム「番組部門」」で大賞を受賞。ほかに、NNNドキュメント『宇宙に一番近い町工場 〜ロケット職人の夢』(07年)を制作。現在、営業局所属。




◆◇◆故郷・青森の海に思う◆◇◆
ゲスト 岸本 達也 氏

 これも何かの縁であろうか―。「見る会・語る会」の開催地となった青森市は、坂本泰三さん(サカイタイゾー)の故郷だ。1918年に生まれ、18歳までこの地に育った。若かりし頃、坂本さんはフランスに渡り、画家になることを夢みていたという。「見る会・語る会」当日の朝、早めに起きて青森の海を見に行った。かつての青年は、この果てなき青きキャンバスにどんな未来を思い描いていたのであろうか。しかし―、無残にも夢は戦場に置き去りにされてしまった。硫黄島で戦った坂本さんは、復員後、本格的に絵を描くことはなかった。遺族によると、父親は家族が寝静まると、蛍光灯の小さな明かりでひっそりとスケッチをしていたという。目の前に広がる故郷の海とは対照的な、その光景―。坂本さんは戦場で何を経験し、戦後、どのような思いでひとり筆を走らせていたのだろうか―。「見る会・語る会」での番組上映中、私はずっとそのことを考えていた。


<制作者プロフィール>
岸本 達也(きしもと たつや) 静岡放送

1974年生、兵庫県出身。99年静岡放送入社、2年間の営業局勤務を経て01年より情報センター所属。ドキュメンタリー番組に携わるようになったのは2年前。07年にSBSスペシャル『180枚の自画像 〜夭折の画家 石田徹也』(地方の時代映像祭コンクール 優秀賞および佐藤真賞受賞)を制作、以後SBSスペシャル『家族の肖像 〜47回目のラストスパート 』(08年、地方の時代映像祭コンクール優秀賞および村木良彦賞)、今回の番組が、日本民間放送連盟賞テレビ報道番組の最優秀賞、「地方の時代」映像祭2009グランプリを受賞した。