全国制作者フォーラム2025を開催しました

- 日時:2025年2月15日(土)
- 会場:如水会館 2階「スターホール」
- 主催:放送文化基金
2024年に5地区で開催された制作者フォーラムでのミニ番組コンテスト入賞者を招き、現在放送界の第一線で活躍している3人のゲストと丹羽美之さん(東京大学教授)をコーディネーターに迎え、全国から制作者や放送関係者約90名が集まり、熱いトーク、意見交換が行われました。

<司会> 小野 桃果 (おの ももか)
アナウンサー (テレビせとうち)
制作者フォーラム5地区のミニ番組優秀作品上映と意見交換

各地区で行われたミニ番組コンテストで優秀作品に選ばれた15番組を上映し、すべての作品についてゲストに講評をもらい、会場の参加者を交えて意見交換を行いました。また、上映された番組の中から3名のゲストとコーディネーターに気に入った番組を選んでいただき、懇親会で発表、表彰しました。
ミニ番組優秀作品(上映順)

村瀬賞

野木賞

前川賞

丹羽賞
中四国制作者フォーラムinよなご | |
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生たまごJOY!「藤井茉莉花のFIRST TAKE」 映像は、こちらから。 |
上田 七生(山陰放送) |
とく6徳島「空飛ぶクルマにかける」 | 奥田 真由(NHK徳島放送局)☆村瀬賞 |
ニュース チャンネル4「自閉症のアニマル画家」 映像は、こちらから。 |
乗松 凌太(南海放送) |
九州放送映像祭&制作者フォーラムinふくおか | |
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記者のチカラ「じぶんだけの色~画家・太田宏介が描く世界~」 映像は、こちらから。 |
日高 真実(テレビ西日本) |
MBCニューズナウ「おばちゃんの鳥刺し」 映像は、こちらから。 |
前田 政樹(南日本放送) |
TKUライブニュース「心待ちにした父がいない稲刈り」 映像は、こちらから。 |
岡崎 宣彰(テレビ熊本) |
北陸・甲信越制作者フォーラムinとやま | |
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いっちゃん☆KNB「アイスの名店 75年の歴史に幕」 映像は、こちらから。 |
山形 直輝(北日本放送)☆野木賞 |
ニュース6「廃墟で遺体発見の謎」 映像は、こちらから。 |
嶋田 万佑子(チューリップテレビ) |
ふむふむ『若き蒔絵師が遺した「未来」』 映像は、こちらから。 |
菅井 智絵(北陸朝日放送) |
愛知・岐阜・三重制作者フォーラムinなごや | |
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キャッチ!「ひやむぎ選手権」 映像は、こちらから。 |
齋藤 竜星(中京テレビ放送) |
チャント!「僕たちのマヂでロックだった昼休み ~マヂ学校に向かいます番外編~」 | 濱崎 みらの(CBCテレビ) |
ドデスカ+『全盲の柔道家 「右手で相手を読む」』<11分9秒> 映像は、こちらから。 |
石塚 莉子(名古屋テレビ放送) |
北日本制作者フォーラムinあおもり | |
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ステップ『「百年後の子孫(こども)たちへ」 帰還困難区域の記録誌 住民たちの13年』 映像は、こちらから。 |
木田 修作(テレビユー福島)☆前川賞 |
ゴジてれChu!「福島第一原発事故と中国企業 処理水に揺れる日中関係」 映像は、こちらから。 |
王 国屹(福島中央テレビ) |
イチオシ!!「自衛隊車両海外流出問題 独自の追跡取材で防衛省が動く」 映像は、こちらから。 |
須藤 真之介(北海道テレビ放送)☆丹羽賞 |
トークセッション




ミニ番組の上映と意見交換の後、トークセッションが行われました。ゲストには、野木亜紀子さん(脚本家)、前川瞳美さん(日本テレビ放送網コンテンツ制作局ディレクター)、村瀬史憲さん(名古屋テレビ放送 報道情報局報道センタースペシャリスト)を迎え、コーディネーターとして丹羽美之さん(東京大学教授)が進行役を務めました。ドラマ、バラエティ、ドキュメンタリーの第一線でそれぞれ活躍するゲスト陣。これまでの番組作りを振り返りつつ、今のテレビに対する思いを語り合いました。
企画テーマと出会うには
冒頭、番組を企画する上で心がけていることについて、ゲストがそれぞれ回答しました。
野木さんは「“家族”という普遍的なテーマであっても、時代性を加味すれば切り口を変えて書くことができます。あとは、普段からいろいろなことに興味を持ったり、流行っているものにはひと通り目を通したりしています」と話しました。沖縄の基地問題などを扱った『連続ドラマW フェンス』(2024年ギャラクシー賞テレビ部門大賞)について丹羽さんから話を振られると、「複雑な問題は複雑なまま書きつつ、興味を引くようなエンタメドラマにするのに苦労しました」と明かしました。
前川さんは『上田と女がdeepに吠える夜』(TVerアワード2024特別賞)で生理の企画を扱い、大きな反響を呼びました。先に放送がスタートしたゴールデン帯の『上田と女が吠える夜』では「笑いと共感がベースにある」と前置きし、「深夜枠の“deep”では、自分がこれまで女性として生きづらさを感じ、苦しんだ経験を企画にしていきました。もともと女性を勇気づけたいという思いもあって」と語りました。
村瀬さんはプロデューサーの立場から、「最初の狙いと違った映像をディレクターが持ち帰ってくることがあります。その映像の中に、深堀りできそうな取材対象者やワンカットシーンが入っていて、それが端緒になっていく」と話しました。自身の若手時代については、「制作会社で毎日企画書を書いても採用されない時期が続き、悩んだこともありました。ただ、ある関心を持って取材現場に訪れてみると、そこに出会いがあり、自分の関心やテーマが見えてくることがありましたね」と振り返りました。
集まって作る、集まって見る
動画配信サービスが普及し、テレビの視聴習慣が大きく変化している昨今。テレビの強みや魅力について語り合いました。野木さんはテレビの影響力について触れ、「配信だと埋もれてしまうこともあるが、多くの人々が同時に視聴できるテレビには即時性もあり、一瞬で大きな話題になる。だからこそ、その意識を持って制作しなければいけない」と話しました。前川さんは「たまたまサウナに居合わせた他人同士が、自分が制作した番組を見て笑いが起きたという内容の投稿をXで見た時、やりがいを感じた」と語りました。村瀬さんは「ひとつの番組を作るために、ディレクターやカメラマン、音声、編集など多くの人が関わるからこそ、よりよいものを作ることができるし、チームで仕事をしているという連帯感が生まれる」と語りました。
“最新作が自信作”と言えるように
トークセッションの後半では、事前に会場から集められた質問にゲストが回答しました。
ヒット作を連発する野木さんには、普段からプレッシャーとどのように向き合っているか問われ、「気にしていないですね。視聴率は狙って取れないですし、私一人で映画やドラマを作っているわけではないので気負ったところで仕方がない。ただ、自分が納得する作品を世に出したいと常に思っています。“最新作が自信作”と胸を張って言えるように」と答えました。
現在、レギュラー番組を3本抱える前川さんには、仕事を辞めたいと思ったことがあるか質問がありました。「週8で辞めたいと思っている(笑)。ただ、これからを生きる子どもたちが少しでも生まれてきてよかったと思える社会にできたらと思っているので、番組を作り続けたいと思う」と今後の抱負も交えて語りました。
村瀬さんには、よりよい作品作りのための制作環境とは何か問われ、「YouTubeのおかげで、ドキュメンタリーがテレビで放送されていることがようやく認知されてきていると感じています。映画や配信など出し口を広げていければ、いずれ環境もよくなっていくでしょうし、最近、ドキュメンタリーや報道を志望する若い人も増えているので、そういった努力を続けたいと思います」と話しました。 最後に丹羽さんが「多様性が叫ばれる時代だが、同時に差別や分断も生んでいるように思います。制作者の皆さんには、小さな声や埋もれた声に耳を傾け、世の中に広く伝え、社会をいい方向へと変えていってほしい」と締めくくりました。
ゲスト・コーディネーター プロフィール

野木 亜紀子 (のぎ あきこ) 脚本家
1974年東京都生まれ。脚色作品に、ドラマ『重版出来!』『逃げるは恥だが役に立つ』、映画『アイアムアヒーロー』『罪の声』『犬王』『カラオケ行こ!』など。オリジナル作品に、ドラマ『アンナチュラル』『コタキ兄弟と四苦八苦』『獣になれない私たち』『MIU404』『海に眠るダイヤモンド』『スロウトレイン』、映画『ラストマイル』など。『連続ドラマW フェンス』(23年) で第61回ギャラクシー賞大賞、第74回芸術選奨放送部門文部科学大臣賞を受賞。

前川 瞳美(まえかわ ひとみ) 日本テレビ放送網 コンテンツ制作局 ディレクター
1988年兵庫県生まれ。多摩美術大学卒業後、2010年に日本テレビ放送網に入社。『人生が変わる1分間の深イイ話』を皮切りに、『月曜から夜ふかし』でディレクターデビュー。『ヒルナンデス!』『嵐にしやがれ』などを経て、現在は『世界の果てまでイッテQ!』を担当。『上田と女が吠える夜』『上田と女がDEEPに吠える夜』で企画・演出を担当し、特に生理をテーマにした企画で大きな反響を呼んだ。

村瀬 史憲(むらせ ふみのり) 名古屋テレビ放送 報道情報局報道センター スペシャリスト(ドキュメンタリー担当)
1970年愛知県生まれ。大学在学中から番組制作会社に所属しテレビ朝日やNHKの番組制作に関わる。2005年に名古屋テレビ放送に入社。報道局でニュース、ドキュメンタリーを担当。2017年『防衛フェリー』(文化庁芸術祭大賞・ギャラクシー賞報道活動部門大賞)、18年『葬られた危機』(民放連賞準グランプリ)、20年『面会報告』(放送文化基金賞最優秀賞)、24年『掌で空は隠せない』(「地方の時代」映像祭グランプリ) など制作。

丹羽 美之(にわ よしゆき) 東京大学 教授
1974年三重県生まれ。専門はメディア研究、ジャーナリズム研究、ポピュラー文化研究。主な著書に『日本のテレビ・ドキュメンタリー』、『NNNドキュメント・クロニクル:1970‐2019』、『記録映画アーカイブ・シリーズ(全3巻)』(いずれも東京大学出版会) などがある。『GALAC』編集長、ギャラクシー賞テレビ部門委員長などを経て、現在、放送文化基金賞審査委員などを務める。